「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」の次作にあたり、スピンオフ的な「こうしてお前は彼女にフラれる」を読みました。前作はオタクの話、今作は浮気男の話、みたいな、どこかで聞いた前評判から軽い感じを想像しがちなのだけど、全然そういうものではあり…
小説は第二次世界大戦中のハンガリー、双子の子どもが母親に連れられて、会ったこともない祖母のもとに疎開してくるところからはじまる。読んでいるうちに明らかになるのだけど、小説はこの双子が書いた日記の体裁ですすむ。 2人はその日記に決まりを設けて…
もし自分の国を離れなかったら、わたしの人生はどんな人生になっていたのだろうか。もっと辛い、もっと貧しい人生になっていただろうと思う。けれども、こんなに孤独ではなく、こんなに心引き裂かれることもなかっただろう。幸せでさえあったかもしれない。 …
彼は言った。「月光を意味する単語は月光」これを聞いて彼女は嬉しくなった。それは論理的に複雑で、奇妙に感動的であり、循環的な美と真理をもっていた。ーあるいは、循環的というよりも最大限に直線的なのかもしれない。 この小説は訳がわからない。もしく…
アメリカの現代作家を代表する存在として、ドン・デリーロ、コーマック・マッカーシーと並んで称されることの多いトマス・ピンチョンですが、その文章の長大であること、難解であることも同様に有名であると思います。今回読んだ「競売ナンバー49の叫び」…
シャーリイ・ジャクスンは「居心地の悪い部屋」というアンソロジーを読んで知りました。その時はいろんな作家がいるもんだな、とか、アンソロジーもこういうよく知らない作家を読むきっかけになるだな、などと考えていたのですが、近くの本屋でこの作家の本…
村上春樹の最新の短編集「女のいない男たち」をようやく読みました。作者が大好きなのになかなか読まないのは、駄作だったら嫌だな、という気持ちが先に立ちがちなせいもあると思います。結果的には完全な杞憂でした。 女のいない男たち (文春文庫 む 5-14) …
ディストピア小説の古典であるオルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」を読みました。読み終わるまで、古典だということも、そもそもディストピア小説の正確な定義さえ知らなかったのですが。 ディストピア - Wikipedia 一般的には、SFなどで空想的な未…
最近、イタロ・カルヴィーノの「見えない都市」を読みながら寝ています。タイトルからかっこいいことを書こうとしたようだけど、そういうわけで本当に、幻想を読みながら眠くなって、そのまましっかりと寝付けていると言いたいだけです。本を読みながら寝よ…
ジュノ・ディアスは村上春樹がエッセイで評価していたのもあり、読もう読もうと思っていたのですが、文庫化されておらず、なかなか高価なことから手を出せていませんでした。内容的にはレビューなどから、アメリカのナード(いわゆるオタク)文化がテーマの…
久しぶりに読み返しました。難解な、まさに王道といった感じのSFです。どちらかというとアンドレイ・タルコフスキーが映画化した「惑星ソラリス」の方で有名かもしれません。僕は見ていませんが。 この小説の主題は未知のものと遭遇することです。ソラリスは…
書評ブログを始めようと思った時に、まずは自分が最も好きな小説を上げようと思いました。最も好き、と言っても1つに絞るのは難しいのですが、その時に頭に浮かんだのが「バベルの図書館」が入った「伝奇集」という短編集でした。ではなぜそうしなかったの…
コーマック・マッカーシーの「越境」、国境三部作の2作目で650ページの大作です。面白かったから2日で読み終わったけど、内容はかなり哲学的で、登場人物の語る内容を細部まで読み解こうと思えばそれなりの時間がかかると思います。 越境 (ハヤカワepi文庫…
アンナ・カヴァンの「氷」は「バーナード嬢曰く。」という漫画の3巻で紹介されていて読みました。書評ブログを始めようとするにあたって漫画の話をするというのも変な感じがしますが、この漫画は作者自身の小説に対する溢れる愛が、魅力的な登場人物を通し…