2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

トマス・ピンチョン「競売ナンバー49の叫び」 ー 難解

アメリカの現代作家を代表する存在として、ドン・デリーロ、コーマック・マッカーシーと並んで称されることの多いトマス・ピンチョンですが、その文章の長大であること、難解であることも同様に有名であると思います。今回読んだ「競売ナンバー49の叫び」…

シャーリイ・ジャクスン「くじ」 ー 心に引っかかるという意味ではこの上なく引っかかる

シャーリイ・ジャクスンは「居心地の悪い部屋」というアンソロジーを読んで知りました。その時はいろんな作家がいるもんだな、とか、アンソロジーもこういうよく知らない作家を読むきっかけになるだな、などと考えていたのですが、近くの本屋でこの作家の本…

村上春樹「女のいない男たち」 ー 偏愛する作家が、歳をとった今でも傑作を書くことの安心

村上春樹の最新の短編集「女のいない男たち」をようやく読みました。作者が大好きなのになかなか読まないのは、駄作だったら嫌だな、という気持ちが先に立ちがちなせいもあると思います。結果的には完全な杞憂でした。 女のいない男たち (文春文庫 む 5-14) …

オルダス・ハクスリー「すばらしい新世界」 ー ディストピアの古典、古典と知らずに読んで面白い

ディストピア小説の古典であるオルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」を読みました。読み終わるまで、古典だということも、そもそもディストピア小説の正確な定義さえ知らなかったのですが。 ディストピア - Wikipedia 一般的には、SFなどで空想的な未…

イタロ・カルヴィーノ「見えない都市」 ー 幻想を抱きながら寝られる

最近、イタロ・カルヴィーノの「見えない都市」を読みながら寝ています。タイトルからかっこいいことを書こうとしたようだけど、そういうわけで本当に、幻想を読みながら眠くなって、そのまましっかりと寝付けていると言いたいだけです。本を読みながら寝よ…

ジュノ・ディアス「オスカー・ワオの短くも凄まじい人生」 ー 軽い気持ちで読み始めたら傑作だったという時がある

ジュノ・ディアスは村上春樹がエッセイで評価していたのもあり、読もう読もうと思っていたのですが、文庫化されておらず、なかなか高価なことから手を出せていませんでした。内容的にはレビューなどから、アメリカのナード(いわゆるオタク)文化がテーマの…

スタニスワフ・レム「ソラリス」 ー まさにSF

久しぶりに読み返しました。難解な、まさに王道といった感じのSFです。どちらかというとアンドレイ・タルコフスキーが映画化した「惑星ソラリス」の方で有名かもしれません。僕は見ていませんが。 この小説の主題は未知のものと遭遇することです。ソラリスは…

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「バベルの図書館」 ー 小説それ自体が美しいということ

書評ブログを始めようと思った時に、まずは自分が最も好きな小説を上げようと思いました。最も好き、と言っても1つに絞るのは難しいのですが、その時に頭に浮かんだのが「バベルの図書館」が入った「伝奇集」という短編集でした。ではなぜそうしなかったの…

コーマック・マッカーシー「越境」 ー もはやロマンとかの枠にない放浪

コーマック・マッカーシーの「越境」、国境三部作の2作目で650ページの大作です。面白かったから2日で読み終わったけど、内容はかなり哲学的で、登場人物の語る内容を細部まで読み解こうと思えばそれなりの時間がかかると思います。 越境 (ハヤカワepi文庫…

アンナ・カヴァン「氷」ー 世界は破滅するが、それはさて置き少女を追いかけまわす

アンナ・カヴァンの「氷」は「バーナード嬢曰く。」という漫画の3巻で紹介されていて読みました。書評ブログを始めようとするにあたって漫画の話をするというのも変な感じがしますが、この漫画は作者自身の小説に対する溢れる愛が、魅力的な登場人物を通し…