2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ジュノ・ディアス「こうしてお前は彼女にフラれる」 ー 軽そうに見えて確かに軽妙なのに、ぜんぜん軽くない

「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」の次作にあたり、スピンオフ的な「こうしてお前は彼女にフラれる」を読みました。前作はオタクの話、今作は浮気男の話、みたいな、どこかで聞いた前評判から軽い感じを想像しがちなのだけど、全然そういうものではあり…

アゴタ・クリストフ「悪童日記」 ー 唯一無二の日記小説、なににも似ていない

小説は第二次世界大戦中のハンガリー、双子の子どもが母親に連れられて、会ったこともない祖母のもとに疎開してくるところからはじまる。読んでいるうちに明らかになるのだけど、小説はこの双子が書いた日記の体裁ですすむ。 2人はその日記に決まりを設けて…

アゴタ・クリストフ「文盲」 ー 物語的自伝というよりも小説

もし自分の国を離れなかったら、わたしの人生はどんな人生になっていたのだろうか。もっと辛い、もっと貧しい人生になっていただろうと思う。けれども、こんなに孤独ではなく、こんなに心引き裂かれることもなかっただろう。幸せでさえあったかもしれない。 …

ドン・デリーロ「ボディ・アーティスト」 ー わかりにくいけれど異様に美しい

彼は言った。「月光を意味する単語は月光」これを聞いて彼女は嬉しくなった。それは論理的に複雑で、奇妙に感動的であり、循環的な美と真理をもっていた。ーあるいは、循環的というよりも最大限に直線的なのかもしれない。 この小説は訳がわからない。もしく…